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文字が織りなす気ままなセカイ

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セカイノカケラ。 第1回 『rain day』

こんにちは、緋龍です。
『考えていたこと』として、

楽曲やいろんな出来事をモチーフにした短編を書く

というものがありました。

この「セカイノカケラ。」は、不定期に更新します。
追記にはモチーフの概要を書いておくので是非そちらもご覧ください。

それでは、のんびりとお楽しみください。



ある日の放課後。
教室には2つの影があった。
一つは女の子。
もう一つは男の子。
向かい合って座っていた。
二人の間の机の上にはたくさんの紙の束があった。
その中には、『夏休みのしおり』という文字が躍っているものもあった。

男の子と女の子が数枚ずつ紙をとってはホッチキスでとめていく。
ぱちん。
ぱちん。
その音だけが聞こえる教室の中の時間はあっという間に過ぎていった。
「これで、最後だね」
女の子が笑った。
男の子も笑顔を向ける。
最後の紙の束の左側を、ぱちん、ぱちん、と2か所をとめて、女の子は紙の束を机の上に置いた。

「ごめんね、こんなに遅くまで手伝わせちゃって」
女の子は時計をちらっ、と見た。
その針は5と6の近くにあった。
「ううん、大丈夫。でも、もう、帰ろう」
男の子は立ち上がった。
女の子は紙の束を整えて、かばんを持った。
「じゃあ、行こう」
女の子の後から出た男の子が扉を閉めた。
玄関で靴を履き替える。
女の子は一足先に外に出た。
少し遅れて、男の子も外に出てきた。
そして、どちらともなく歩きだす。
部活動で汗を流す生徒達の横を静かに通り過ぎてゆく。
特に、何も話さずに。
ただ、並んで歩いてゆく。
それでも、女の子にとっては、それがうれしかった。
一緒に歩いているだけで。
女の子は幸せだった。
男の子と一緒にいられることが、幸せだった。
温かな気持ちに包まれながら、女の子は歩いていく。
でも、その上に広がる空は少しずつ暗くなっていた。

そして。
ポた、ポた、と小さな雫を女の子は感じた。
すぐに小さな雫は数を増やし、二人の体を濡らし始めた。
「…あっ…雨…だね…」
女の子のつぶやきに男の子は小さくうなずいて、傘を広げた。
女の子はかばんの中を覗き込んだ。
「…あれっ…?入ってるはずなのに…」
折りたたみ式のかさが見つからない。
「(いつもは入れっぱなしなのに、今日に限って…)」
女の子はかばんを閉じた。
「…かさ、ないの・・?」
男の子が訊いてきた。
女の子は、こくん、とうなずいた。
「なら、入っていいよ」
「えっ…?いいよ、走って帰るから」
そんなふうに答えながら、女の子はかばんを頭の上に掲げた。
「でも、風邪ひいちゃうよ。今だって、寒そうだし」
「えっ…でも…」
事実、女の子の方は小刻みに震えていた。
「僕なら、大丈夫だから」
「う…うん…じゃあ…」
女の子はかばんを下し、傘の下に入った。
「行こっか」
男の子は小さくつぶやいて、ゆっくりと足を前に出した。
女の子もそれに合わせる。

歩道橋の階段をゆっくりと上がる。
下では、傘の花がぽつぽつと咲き始めていた。
あか、きいろ、みずいろ。
いろいろな色があって、とても綺麗だった。

女の子は、ふと気付く。
自分が今相合傘をしていることに。
顔が真っ赤になるのが自分でもわかった。
「(でも、これって、神様がくれたチャンスなのかな…?)」
女の子はちょっとだけ、男の子の肩に自分の肩を近付けた。
ちらっ、と男の子の横顔を見てみた。
でも、男の子は何も気づいていない様子だった。
女の子はちょっと複雑だった。

男の子は、前を見ながらつぶやく。
「あの…あのさ…」
最後まで、言葉にはなっていなかった。
女の子はもどかしさを感じながらも隣を歩いた。

傘をたたく雨の音に包まれながら、二人は静かに歩いてゆく。
時折、隣を歩く人の顔をちらっ、と見ようとしては、目線が合ってしまって、ついっ、と目をそらしてしまう。
男の子を何かを言おうとしてもすぐに黙り込んでしまっていた。

静かな静かな帰り道。
とても楽しい帰り道。
でも、女の子はこの時間の終わりを感じていた。

ゆっくり歩く二人の前に、分かれ道が現れた。
男の子の足は左を向いた。
でも、女の子の足は、右を向く。
「(こっちの方が、家に近いんだし…)」
自分を無理やり納得させて、女の子は男の子に告げた。
「ね、私、右だから。ここでもう、いいよ。ありがとう、傘に入れてくれて」
女の子はそれだけを言いきると、かばんを掲げて走りだそうとした。

だけど…。
「えっ…?」
走りだそうとした女の子の、冷え切った左手を、優しいぬくもりが包み込んだ。
「あ、あのさ、もし…もしよかったら、もう少しだけ……一緒にいてくれないかな…?」
男の子は頬を紅く染めながら、はっきりと言葉にした。

女の子は、ちょっとだけ涙ぐんで、こくん、とうなずき、傘の下へ。

二人はまた静かに歩きだす。

女の子は、温かい左手を見ながら思った。

「(今日くらい、遠回りしても、いいよね?だって、今、幸せなんだから…!)」

                                     完

モチーフ解説。
ずばり、『想いはRain Rain』です。
『神のみぞ知るセカイ』のヒロインの一人、中川かのんのアルバム、『Birth』に収録されています。
詳しい感想は後々の記事で。

『Birth』についてはこちらから。
『かのんのおと』
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Author:緋龍
のんびりといろんなことを書いてるブログ。
最近の仕事はプロデューサー。仕事場所はアイマスSP。



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こんなアニメもあるから観てくださいね!

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